「学びの時~人生の道しるべ~」 年中行事 歴史かみしめ――薬師寺・大谷徹奘(てつじょう)さん法話

2022年10月31日 | 誰でも

 福の神の代表である大黒様を描いては人々に施していた画僧・明誉古磵(みょうよこかん)(1653~1717年)が、約300年前に描いた「玄猪餅之図(げんちょもちのず)」を所蔵しています。

 「玄猪餅」は亥の月(現在の11月頃)の最初の亥の日の亥の刻に食べるお菓子。起源は古代中国で無病息災を祈願した「亥子祝(いのこいわい)」とされます。その風習が伝わったのは平安時代。『源氏物語』にも光源氏と紫の上が食べる場面があります。

 時代が下るにつれ多産のイノシシにあやかって子孫繁栄を願うようにもなり、江戸時代に定着したそうです。今では「亥の子餅」の名で親しまれています。色や形に制限はなく、筋目をつけてウリ坊を模したものもあります。

 また、亥の月の亥の日は「いろり」や「こたつ」を使い始める「炉開きの日」とされています。イノシシが陰陽五行説で水性に当たり、火難除けの象徴とされたことに由来します。

 このような学びを得てから「玄猪餅之図」を見直すと、古磵和尚が無病息災・子孫繁栄・火難除けなど、人々の幸せを心から願って絵筆をとっていたのだと感じました。

 日本には年中行事がたくさんあります。しかし生活環境の変化で、行事の意味が忘れられ、衰退の一途です。私自身、奈良で四十年以上も過ごしながら「玄猪餅」について何も知らなかったのが実情です。

 今年の亥の月の亥の日は11月6日。亥の刻は午後9~11時です。お菓子には少し遅い時間ですが、この歴史ある行事を体験するため、友人の和菓子店に「亥の子餅」を注文しました。

 読者の皆様にもお召し上がりいただき、この幸せを願う行事を伝承する一端を担っていただけたらと願っています。

合掌

(薬師寺執事長 大谷徹奘)

写真=「玄猪餅之図」の前で、奈良市の和菓子店「樫舎」の「亥の子餅」を手にする大谷執事長(薬師寺で)

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