時間かかっても歩き続ける――薬師寺 大谷徹奘さん法話

2020年07月27日 | 誰でも

 <人間はね 仮面ライダーや ウルトラマンのように 簡単に変身して 強くはなれないんです 涙ながして汗かいて だんだんと強くなるんです 時間がかかるんです それで人間なんです>

 昭和38年生まれの私は、まさに仮面ライダーとウルトラマンの世代です。幼い頃、私は仮面ライダーに、ウルトラマンに、ヒーローになりたかった。そんな私の前に現れた生身のヒーローが師匠・高田好胤(こういん)和上でした。師匠のようなヒーローになることを夢見て、17歳の時に弟子にしていただきました。しかし、現実は厳しく、いつしか修行場には空っぽの自分が座っていました。その頃の手帳には「逃げたい」「辞めたい」の言葉が何度も殴り書きされています。

 ある日、気の抜けた私を察してか、師匠が若い頃の苦労話を聞かせてくださいました。師匠は1967年に43歳という若さで薬師寺の住職になられると同時に、およそ450年間の歴代住職の念願だったお堂の再建に着手、身を粉にして全国を行脚されました。

 ところが、その活動に対し『高田は売僧(まいす=商売をする僧侶)だ』などと、容赦ない誹謗中傷が浴びせられたそうです。悔しさから「何度、涙を流したかわからない」と話されたのです。私のヒーローが涙を流していたことに、大きな衝撃を受けました。けれども、最後には「自分の信念を貫けなければ、生きている意味がない」と言われました。

 忘れていた「夢」を思い出すだけでなく、「夢」が「信念」に変わりました。そして自分に誓ったのです。どんなに汗をかいても、どんなに涙を流しても、どんなに時間がかかっても、自分の選んだ道を歩き続けることを。その思いを込めて書いたのが冒頭の言葉です。

 今、私たちは新型コロナウイルス感染症で大変な困難にあっています。しかし、今までも多くの困難がありました。オイルショック、バブル崩壊、阪神淡路大震災、リーマン・ショック、東日本大震災など、どれもがその時は先が見えないことに不安でいっぱいだったと思います。そんな苦しみも私たちは乗り越えてきたのです。ですから今回も決してあきらめることなく、あせらずに「だんだんと強くなる」ことだと思います。必ず道は拓(ひら)けます。

 合掌

(薬師寺執事長、大谷徹奘)

写真=大谷執事長直筆の扁額(へんがく)(東京都江東区・重願寺蔵)

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