苦しい時こそ夢を持とう――薬師寺 大谷徹奘さん法話

2020年08月24日 | 誰でも

 東京都墨田区立両国小学校が私の母校です。両国という地域柄、学校の周りに多くの相撲部屋があり、お相撲さんが大きなバスタオルを道に敷いて股割りをする姿に、なぜこんなに柔らかいのかと、びっくりしながら見入ったことがあります。

 また、「気をつけて帰れよ」と気さくに声をかけられ、うれしかった思い出もあります。そのような街で育った私は相撲が大好きで、テレビ観戦している時も贔屓(ひいき)の力士が登場すると声を出して応援しています。

 今年の7月場所は、新型コロナウイルス感染防止のために多くの制約がある中で開催され、無事に千秋楽を迎えました。ご存じの通り優勝したのは(幕内で番付が一番下の)幕尻力士の元大関・照ノ富士関でした。

 恵まれた体と修練によって大関に昇進。横綱を嘱望されるものの、怪我(けが)と病気でなんと序二段まで番付を落としました。相撲の世界は番付がすべてです。

 解説者の舞の海秀平氏が「地獄を見て来ただけに」と評するほどの、筆舌に尽くしがたい辛(つら)い日々を過ごしたことでしょう。そのような苦境からはい上がり、誰も経験したことがない復活を成し遂げたのです。

 優勝インタビューでの「笑える日が来ると信じてやってきた」の一言を聞いた時、現在の新型コロナウイルス感染拡大で明日が見えなくなっている私たちに、大切なことを思い出させてくれたと感じ入りました。

 私は日々のことばに「夢を失(な)くした人が負け」という言葉を書いています。これは制限だらけの修行生活が苦しくてどうしようもなくなり、寺から逃げることだけが頭の中に充満して、自分が選んだ仏道修行の先に見ていた「夢」を見失いかけていた時に書いたものです。

 現在の私たちは、新型コロナウイルス感染症によって、築き上げてきた自由が奪われました。さらに、その終息が見えない今、窮屈を超えて苦しみともいえる行動制限の中で生きていかねばならないのです。

 今まで通じていたことが通じず、そうかといって今まで育ててきた自分を急に変化させることも儘(まま)なりません。その上、経済的に大きな支障が出てきたとなれば、「夢」を見失うことはあると、十分に承知しています。しかし、それでは道は閉ざされてしまうのです。

 苦しい時ほど「夢」を見失ってはならない。これが「ウィズコロナ」を生き抜く核心だと思います。そのことを身をもって教えてくれたのが今回の照ノ富士関の優勝だと、私は受け止めました。

 合掌

(薬師寺執事長、大谷徹奘)

写真=「苦しい時ほど夢を見失ってはならない」と話す大谷執事長(奈良市で)

ご感想はこちらから(会員ログイン後、入力フォームにご記入ください)

薬師寺 大谷執事長直筆のオリジナル色紙を1人にプレゼント

⇒「学びの時~自粛を好機に~」――薬師寺・大谷徹奘さん法話

⇒「心の修練 新しい生き方」――薬師寺・大谷徹奘さん法話

⇒「苦しいときほどあきらめない」――薬師寺 大谷徹奘さん法話

⇒「時間かかっても歩き続ける」――薬師寺 大谷徹奘さん法話

PR

  • 大阪よみうり文化センター
  • 休暇村
  • 大阪読売サービス
  • 記念日の新聞
  • OYS WEBSTORE
  • すくすく新聞