個々の心がけが国をつくる――薬師寺・大谷徹奘さん法話

2021年01月18日 | 誰でも

 12年の歳月をかけて行われた国宝・薬師寺東塔の大修理が、多くの方々のお力添えによって完了しました。残念なことにコロナ禍で落慶法要の日時は未定ですが、3月1日より1階にあたる初層の扉を開けて、どなた様にも拝観していただけるよう準備をしています。

 1300年の歴史の中で初めてとなる全解体修理は、塔の全体を覆屋(おおいや)で囲って作業するため、金堂正面に安置されていた灯篭(とうろう)は2011年に取り外されていました。しかし、現在は元に復され、光が灯(とも)されています。

 実はこの拙文は、再び緊急事態宣言が首都圏の1都3県に発令された直後の1月8日に書いています。疫病は終息の願いとは裏腹に猛威を振るい続けており、唯々(ただただ)右往左往するばかりです。

 毎月8日は、薬師様のご縁日。法要を終えるとすぐに退堂して寺務所に戻るのが常なのですが、この日はまるで引き寄せられるように灯篭の前に立っていました。

 ご存知の方は少ないと思いますが、灯篭の竿(さお)と呼ばれる柱部分には師匠・高田好胤(こういん)和上の信条である「発菩提心(ほつぼだいしん)荘厳国土(しょうごんこくど)」の言葉が、ご自身の揮毫(きごう)によって遺(のこ)されています。

 この言葉は師匠が多くの経文の中から選んで組み合わせたもの。「一人ひとりが清らかな心に目覚め生きるならば、国全体が美しく安穏となる」ことを意味し、「個々の心がけが、そのままに国を形づくるのだ」と、ご教授いただいていました。

 疫病の拡大が治まらず、苦しむ人々に対してお伝えする言葉が見つからず、もがいていた私の前に亡き師匠が立たれ、「生き方の基本は教えた筈(はず)だ」と諭されたかのようでした。気づけば灯篭に深々とお辞儀をしていました。

 今回は師匠が提唱された言葉を、そのままお取り次ぎいたします。どうぞ、この言葉の意をくみ、今の私たちがどのような生き方をすべきなのかを、深くお考えいただければと思います。

合掌

(薬師寺執事長 大谷徹奘)

写真=久しぶりに安置された灯篭のそばに立って手を合わせる大谷執事長(奈良市の薬師寺で)

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