お写経で「自分との対話」――薬師寺・大谷徹奘さん法話

2020年11月02日 | 連載

 新型コロナウイルスの感染が拡大して、家で過ごす時間が増え、今までできなかった学びにその時間を活用している人が大勢いることを知りました。そこで今回は、家でできる心の学び「お写経による自分との対話」を勧めたいと思います。

 まず「お写経による自分との対話」とはどのようなものかを、私の経験を通して話します。

 私たちは目、耳、鼻、口、皮膚(五官)を発達させ、自分の外側のものに対しては、とても上手に対応できるようになりました。その反面「自分との対話」は得意とせず、それが故に「自分のことを棚に上げて」という言動を多々取ってしまいます。

 師匠・高田好胤(こういん)和上は「人には検事を、自分には弁護士をではなく、人には弁護士を、自分には検事を」という言葉を遺(のこ)されています。正に私たちの実態と理想的なあり方を表している名言だと思っています。

 その不得意な「自分との対話」の修練法が「お写経」です。お経の文字を夢中に書写している間に、外に向いていた心が自分の方へと向かい「人のことを言うのもいいけれども、お前自身はどうなんだ」と、自問自答できるようになってきます。その自問自答こそが「自分との対話」であり、これによって心の中にあるわだかまりを解消する糸口が見えるようになるのです。

 ちなみに、お写経で「無」になるという話を聞きますが、これは上級者のことで初心者には「自分との対話」を目標にされることが良いとお勧めしています。

 薬師寺は昭和43年(1968年)から「日々の生活の中にお写経を」と提唱し、その際に「自分には縁遠いもの」「間違うことが怖い」などと感じられる方に対して、①家で好きな時間に書くことができる②筆だけでなく鉛筆でもかまわない③一度に全部を書かなくても良い④家族で手分けして書くこともできる⑤納経には期限がない⑥願い事は自由にできる⑦納経されたお写経は薬師寺の堂塔に祀(まつ)られ永代に供養される⑧108巻の納経で満願の証とし輪袈裟(わげさ)を授与する――とお伝えしています。

 今日までの50年間で870万巻のご縁を頂戴しているのですが、これらのお写経のほとんどはご自宅で書写され納められたものであり、満願なされた方は1万人を超えています。

 読者の皆様には「(コロナ)禍を転じて福となす」の思いで、家で過ごす時間にお写経を取り入れていただき、「自分との対話」をなされることをお勧めします。興味がわいた方は、薬師寺のホームページをご覧ください。

 合掌

(薬師寺執事長、大谷徹奘)

写真=大谷執事長が勧める「お写経」は、「家で好きな時間に」「鉛筆でも」「一度に全部でなくても」「家族で手分けしても」よいなどとしている(奈良市内で)=薬師寺提供

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