活動報告
腰を落とし 効率よく筋トレ――脳を鍛える歩き方⑦
よく「入院生活がきっかけで認知症になってしまった」というようなことを耳にします。運動不足で筋肉を使わなくなると身体が衰えるばかりでなく、脳に伝達される刺激が非常に少なくなるため、認知症を進行させることにもつながってしまいます。筋肉を全く使用しない期間が続くと、1日に3~5%ずつ筋力が低下するとも言われています。その分、脳への刺激も少なくなるということです。
今回は、筋力トレーニングと認知症の関係について解説します。筋力トレーニングをすると脳の記憶中枢である海馬付近の血流が良くなるという報告があります。つまり、筋肉を鍛えることで海馬に刺激を与えることが分かっているのです。
ある程度の負荷をかけて筋力トレーニングを行うと乳酸が発生します。脳はその乳酸を感知して、それに見合うように大量の成長ホルモンを分泌させます。成長ホルモンは、海馬にある神経系液性タンパク質の分泌を増加させる働きがあります。この神経系液性タンパク質は、脳神経細胞の生存に大きく関係していて、脳神経細胞を元気にしてくれる働きがあるのです。
認知症の危険因子とされている「アミロイドβ」や「タウタンパク質」が神経細胞を死滅させようとしても、逆にこの神経系液性タンパク質が元気にしてくれるのです。
それでは、どのような歩き方をすれば効率よく乳酸を出すことができるのでしょう。今回は、筋肉をより多く使う歩き方「モンキーウォーキング」を紹介します。要するにお猿さんのような歩き方ですが、普通の歩き方に比べると、とても足の筋肉(特に大腿〈だいたい〉四頭筋)に負荷がかかります。
歩き方は、まず両膝を軽く曲げて、腰を落とします。そして背筋を伸ばし、腰を落としたまま歩きます。太ももの筋肉に気持ち良い充実感を覚えるでしょう。最初は3分ほどやってみましょう。やりすぎると筋肉痛になったり、疲労がたまったりしますので注意してくださいね。
(関西福祉科学大・重森健太教授)
写真=「腰を落として太ももに負荷をかけましょう」と話す重森さん
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