お写経は「心の洗濯機」――薬師寺・大谷徹奘さん法話

 薬師寺の境内には国宝の建物が二つあります。一つは大修理に12年の歳月をかけ、今年2月に竣工した東塔(奈良時代)。もう一つが日本で一番古い禅堂といわれる東院堂です。

 東院堂は創建時の建物は失われ、鎌倉時代に再建されましたが、当時は座禅が流行していたため、土間から板敷きの床に作り替えられたそうです。奈良県内の国宝の建築物には珍しく、靴を脱いで参拝していただいています。ご本尊は悲劇の主人公・有間皇子の19歳の姿を写したと伝えられ、その美しさから「理想の男性像」と呼ばれる国宝・聖観世音菩薩像(白鳳時代)です。

 薬師寺では現在、東院堂の聖観世音菩薩ご宝前でのお写経会を開催しています。50年を超えるお写経勧進の歴史の中で初めてのことです。

 今から41年前、私はこのお堂で得度式を受け、剃髪(ていはつ)し、お袈裟(けさ)を頂戴しました。このたび、お写経会のためにしつらえられた席に座した時、身が引き締まり、仏道を歩き始めた日のことが鮮明によみがえりました。

 東院堂には独特の静謐(せいひつ)な雰囲気が漂っています。その中でお写経されたならば、ご家庭やお写経道場で勤めていただくお写経とは異なる思いをお受け取りになることでしょう。

 師匠・高田好胤(こういん)和上は、そのご生涯を通じ、お写経によって自らの心を顧みることの重要性を説かれると同時に、お写経は「心の洗濯機」「心の掃除機」であると言われ、心の浄化を勧められていました。

 コロナ禍によって私たちの心には、濁りとも例えたくなる閉塞(へいそく)感に満ちています。そのような時だからこそ、聖観世音菩薩さまが私たちをお膝元に招き入れ、お写経によって心を清らかにする場をご提供してくださったのだと定見しています。

 今年7月中の月・水・金曜日に限っての開催ですが、感染予防策をとっていますので、この得難いお写経会にご参加されますことをお勧め申し上げます。

合掌

《追記》国宝・東院堂お写経会については、薬師寺ホームページにて、ご確認ください。

(薬師寺執事長 大谷徹奘)

写真=国宝・東院堂でお写経を勤める大谷執事長(奈良市の薬師寺で)

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