薬師寺で自分に出会う③

2017年06月27日 | TOPICS

■自分のありようを見る

 大谷執事は1年間に約400回、法話に立つそうです。
 その語り口はリズミカルでユーモアたっぷり。笑いの余韻が残っている会場に、「覚えておいて下さい」と、ぽーんと一言放っては、急展開して本題に迫っていきます。

 今回は、わいず倶楽部のメンバーが写経する般若心経についてお話ししていただきました。人間の本来の姿――間違いやすく、迷ってばかりいる人間のありようを、エピソードを交えて語っていただき、般若心経の功徳について、教えていただきました。

 人間みたいなもんは、そんなにきれいでも、かっこよくもない。恨みがあったら、石に刻んでまで説明するようなのが人間なんだ。そりゃ仕方ないよ。だけど、問題なのは、私たちのその後ろ姿をね、子供たちが見てるってことなんだ

 人間という生き物を勉強してきてね、一つだけ間違いのないことを知っています。それは、私たちが人に見せる顔はうそつきだってこと。苦労も迷いもないような顔をしていたって、一枚はいだら、どんな顔が出てくるか。人間みたいなもんは、死ぬその瞬間まで、迷いと悩みとの同居なの。幼稚園に通ってるちっちゃな子供に迷いはないか。あるんだよ。80歳、90歳の人生のベテランに迷いはないか。ありまくりですよ。その迷ってばかりいる私たちが、悟れるように、幸せになれるようにと説いた、人生のガイドブック、それがお経です

 般若心経は、唐の時代、法相宗の鼻祖でもある玄奘三蔵が、インドから中国へと持ち帰って訳したお経です。「空」の思想を説いた「大般若経」約600巻のエッセンスを抽出し、276文字にまとめています。大変短いお経です。

 短いからやさしいのか。とんでもない。こんなにむずかしいお経はないんです。無とか、空とかが好きだという人もいますが、私なんか、プロの坊さん37年やってますけど、いまだにむずかしい。

 般若心経は、玄奘三蔵による訳を「新訳」といい、それより前のものは「旧訳(くやく)」と呼ばれています。大谷執事は、玄奘訳の最初に出てくる菩薩の名前、「観自在菩薩」の頭の3文字に着目し、解釈を深めていきます。この「観自在」は、旧訳では「観世音」となっていました。それを改めたのは、「よっぽどのことだった」と大谷執事は話します。

 玄奘という方は、人生の中で何が大切かということを、この3文字で説きたかったんです。私たちは何かトラブルがおこると、相手が悪い、あいつが悪い、こいつが悪い、というけれど、よく考えないといけない。全部、自分自身の問題なんです。いいですか、「観世音」は外側をよく見ろ、ということ。だけど、玄奘という方は、自分の人生は間違いなく自分のものだということがよくわかっていた。だから、こう変えたのです。自分のありようを見よ、と。それが「観自在」です

 大谷執事は、日本人の精神文化をつくっているものの一つとして、この般若心経を挙げます。そして、「覚えておいて下さい」と一言置いて、こう言われます。

「観自在」。この3文字だけでいい。勉強してください。

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